【スナックの快楽、バーの愉悦(その1)】
さて、マダムの独身時代を語るのに避けては通れないのが”酒”の話。
今回は人生ではじめて入ったスナックのお話を展開してみます。
合コンやら同窓会が花盛りだった20代の前半~半ば頃。
大勢の同世代の友人と出入りするのは、依然としてオシャレ居酒屋が中心でした。
学生時代よりはグレードアップしたとはいえ、やはり本格的にお酒やディープな社交を楽しむには物足りない感じ◎
でも、職場には上司という名の偉いおじさんや、お金の使い道を持て余している独身の30代男子がたくさんいるわけでございます。
で、こういう方々が連れて行ってくれたのが、いわゆる“いきつけのお店”。
なぜか自分の隠れ家を、まっさらの年若い人にこっそり教えたくなるその気持ちー
今ならすごく分かります。自己表現の一種ですよ、アレ。
皆さんももし誘われたら、「わーすごい」って驚いてあげてくださいね。
じゃあ今日はスナックのお話を。
まあ、スナックはですね、どんな田舎にもあるじゃないですか。
おもに近所のおじさんたちが飲んでカラオケ歌ってっていうやつ。
うちの田舎にも何軒もありましたよ。
中には同級生の家が経営しているお店も。
でもホラ、そこは大人の世界。
店の前を通ることはあっても、子供が入ることは許されなかったわけで。
店内の様子に関しては、刑事ドラマの聞き込みシーンで出てくるイメージしかありませんでしたね。
酒やけしたハスキーボイスのママが、咥えたばこで気だるい接客、なぜか焼うどんがメニューにあって・・・そんな感じ。
で、24歳にして次長と課長に連れられて入ったスナックは・・・イメージと寸分違わぬめくるめく世界!
ギンギラギンのミラーボールにカラオケセット。
中年のママに、アルバイトの若いお手伝い美人スタッフが2人ほど。
違っていたのは、2つだけ。
焼うどんのかわりに焼きそばがあったことと、ママの性別が不明だったこと!!
え、どんなママだったかって?
体格は縦にも横にも立派なかなりの大柄。
髪型はベリーショートというか坊主。
厚めのメイクにマツコ・デラックスが着ているようなドレスを着用なさっていました。
さらに声では性別の判定不能(笑)。
後で10年来の常連客である次長に確認したところ、多分ホンモノの女性だろうとのことでした。
あ、そこは気にしちゃいけなかったのね。
ていうか、私はその性別不詳のママ(パパ?)に歓迎のKissをされたんだけどね(笑)
で、私たちが入店した時にはすでに上司のお友達である常連さんが4~5人既に盛り上がっている様子。オジサンたち、赤い顔で私たちを見るなりもう大騒ぎ。
夜のお店というより、友人宅の家飲みに連れていかれたような感じです。
居合わせた方全員の自己紹介からスタート。
勤務先や役職、お子さんの人数までオープンにしてくれるからなんかスゴイ。
一人紹介が終わるごとになぜか全員でカンパーイ!
店内の内装はコテコテ&ギラギラなのに、雰囲気は底抜けに明るく健康的!!
その時点で拍子抜けしましたね。
その辺はママのキャラと、集まるお客さんによって店ごとにかなり違うんでしょうけど。
みんな酔っぱらっているせいか、会話のボリュームは最大。ほぼ絶叫ですね。
で、バカなことを言ってはママに叱られたりビンタされたりというパターン。
今でいうならドS系のお店かも。
でもそのサジ加減が絶妙で、とにかく笑える。
嫁には毎日怒られても、お母さんに叱られることのなくなったオジサンたちには、たまらない愛のムチだったのかもしれません。
そんなやり取りを眺めながら、私はこれまた人生初となるウイスキー(上司のボトル)をロックで飲みつつカラスミをご賞味。
ウイスキーの香しい匂いと喉がピリピリする感じはよく覚えていますが、味の良しあしはさっぱり分からず。
調子に乗って飲んでしまった挙句に酩酊。
ウイスキーは他のお酒と違って急に目が回るんですね~。
突然落とし穴にはまり込んだように、ママと上司のカラオケデュエット「男と女のラブゲーム」の途中からぷっつりと一切の記憶がナシ。
タクシーを呼んでもらって何とか帰りましたが。
翌日、これまでにない二日酔いで一日中ダウン。
飲んで吐いたのは生まれて初めての経験でしたね。
さらに大声を出しすぎたせいか声も出ず。
あ~、飲みに行ったのが金曜の夜でよかった。
でもこのディープな楽しさに目覚めた私は、その後もたびたびこの店に出入りすることに・・・
残念ながら10年前に閉店してしまったけれど、いいお店でしたよ、ホント。